観劇記録:観たら横原悠毅のことが大好きになってしまう舞台『ダッドシューズ』

観劇して間もない今の感情を残しておきたくて筆を執った。毎度のことになるが、これは観劇後を前提としたネタバレ満載のブログなので、これから観劇を控えている人は気を付けてほしい。千秋楽後に投稿することも考えたけれど、私は今書きたいから仕方がない。諦めてほしい。

 

さて、というわけで今回はIMPACTors横原悠毅の初単独主演(おめでとう)舞台『ダッドシューズ』を観てきた。出演舞台を見に行くのは(歌舞伎は除く)これが3作目になる。思ったよりも私は横原くんのことが好きなのかもしれない。好きだが。うっかりこの舞台でもっと大好きになってしまったが。
先に本編に関係のない話をしておくと、私が観劇した日にはメンバーの影山拓也・椿泰我が仲良く見学に来ていた。なんの因果か見学席がかなり近かったので、今年に入ってから(これが何を意味するかは、察してほしい)の生存確認が3ぱくたーず分済んだことになる。普通に助かる。
横原くんひとりで出てくるトリプルカーテンコール(曰く、長く喋るところではないが勝手に喋っているらしい)で紹介があったり、オタクが挙手させられたり、そんでもって何度か「元気そうでしたよ」と言ったりと、座長・横原悠毅が座長権限でPINKyを安心させる時間を作ってくれたように感じて、おまえ本当にそういうところだぞ……と思った。ちなみに開演直前、見学席に現れた2人の姿に、私の2つ隣にいた影山担らしきお姉さんが「集中できない……!」と震えていた。それは本当にそうだと思う。帰り転ばなかったか心配である。

ここからは本編の感想なので、ネタバレを踏みたくない人は読み進めないことをお勧めする。まずは一応、公式のあらすじを引用しておく。

若木翔”は、ダンスチーム「インビジブル」の一員として、日々練習に励むダンサー。
インビシブルはダンスチーム日本一を競うダンスリーグ『ダンスエモーションリーグ』への出場を目指すかたわら、フラッシュモブでチームの活動費を稼いでいた。

だがある日、若木はチームとの一件からダンサーを辞めようと、愛用のシューズを公園のゴミ箱に捨ててしまう。

しかし、ストリートミュージシャン”姫川舞美”の歌を聴き、もう一度挑戦しようと奮起。
シューズを取りに帰るも、すでにシューズは撤去されていた…

途方にくれ、ダイナーで飲み明かす若木
見かねたダイナーのマスター“飯島史奈”は、店に長い間置き忘れられた1足のシューズを渡す。

それは、ちょっとダサいシューズ…『ダッドシューズ』だった。

背に腹は変えられないと、“父親が休日に履くようなデザイン”の“ダッドシューズ”を履き、練習する若木
すると、どこからかダンスのアドバイスを送る声が…声の先には“マル”と名乗る男がいた。

疎ましがる若木に、マルは「ダンスが上手くなる魔法をかけてやる」といい、指を鳴らした。
騙されたと思いながらも若木がステップを踏むと―自由に体が動くのだった!
家に帰ったあとも、ダッドシューズを履き練習する若木
やはりダンスが上達している。
喜ぶ若木は、再びダンスに向き合い始める。
だが、それもつかの間…
公式サイトより引用)

導入は本当にこの通りで、この物語は横原くん演じる若木翔(わかぎ しょう)」、翔の所属するインビジブルのメンバーたち、インビジブルのライバルチームのメンバーたち、チーム行きつけのダイナー店主・史奈ストリートミュージシャン舞美、そして”ダッドシューズに憑く幽霊”マルを中心に展開する。

この舞台、分かってはいたが本当に踊る。めちゃくちゃ踊る。あとめちゃくちゃ歌う。
物語冒頭、翔は「自分にはみんなのような夢がない」と思い悩み、スランプに陥ってしまう。その時のダンスも、翔は決して下手なわけではない。しっかり踊り、しっかり動けている。けれどとあるダンスバトルでミスをしてしまい、ダンサーを辞めようとする。公園でシューズを捨てる時、「さよなら。……ごめん」と呟くのだが、この声がもうめっっっちゃくちゃに良かった。
その後、舞美の歌を聴き、舞美に零した「みんながハッピーならそれでいい」という言葉を「立派な夢じゃん!」と認められ、翔は奮起するも……この後はあらすじの通りである。
(余談だが元々のシューズは赤、手に入れたダッドシューズは白。対比のための色遣いを感じてオタクはにこにこした。なんでも源平にこじつける体質なので言うと、結果的に敗北を期す平家の旗色から勝利を収める源氏の旗色に変わったあったり、かなり勝ち確ムーヴでいいなと思った。そんな厄介オタクみたいなことを考えて選ばれた色だとは思ってはいないが)

先程も書いたとおり、翔は別にスランプでもダンスが下手ではない。ただ確かに、ありえないほど惹きつけられるかといえば、そうではない。ダンスチームの一員と言われてそれがしっくりくる程度の、ダンスが上手いお兄さんといった感じだ。
なのに、翔がダッドシューズを履き、マルに「魔法をかけられた」途端、彼のダンスが一気に変わるのだ。決して下手だったわけじゃない、でも、彼のダンスは本来もっともっと魅力的であることを見せつけられる。鳥肌が立った。まるで本当に魔法にかけられたような、そうとしか思えないほどの変わりようだった。横原悠毅、こわい。あとこの場面の歌がありえんほど良い。普段あまり横原くんの声で聴く機会のない雰囲気の曲だが、完全に乗りこなしていた。良。
翔はフラッシュモブ依頼の主役ポジションを勝ち取ったりと、「世界中の人を幸せにしたい」と言う彼らしいダンスで邁進していく。

しかし、事態は動きだす。舞美が、とあるプロデューサーに声を掛けられた、単独ライブを共同出資で行うというのだ。
初めは自分のことに喜ぶ翔だが、マルは「気をつけた方がいい」と言う。そうして案の定と言うべきか、その男・片桐は悪徳プロデューサー、否、プロデューサーとは名ばかりの詐欺師だった。しかも片倉は、かつて「インビジブル」のリーダー・誠二とライバルチームのリーダー・TAKUを騙し、元はダンス&ボーカルユニット“インビジブル”として活動していた2人を引き裂いた張本人であったのだ。
おいおいおいちょっと待てそこで青春アミーゴムーヴするなんて聞いてねぇぞオイ……‼️
何を隠そう(?)このオタクは重度の青春アミーゴムーヴケミ厨である。いや、分かってはいた、両チームがエンカして睨み合っている時点で「あ、このトップ同士は因縁あるな……昔は一緒だったとかかな……」と思った。思ったけどさ。オタクが脳内補填するのと供給されるのとでは訳が違うじゃないですか。ありがとうございます。しかも当時のユニット名をそのまま自分のチームの名前にしちゃってるのが誠二というのがまたこう、クるものがある。お察しの通りキャラクター的に誠二がバチバチに好きだ。彼が髪長かったらもっと気が狂ってたかもしれない。
閑話休題、翔(というか横原くん)の話に戻ろう。“インビジブル”時代の回想シーンで、その頃のオリ曲(すみませんこの表現が1番馴染みがありまして)を2人が歌い踊る場面がある。その時、その話を聞いている翔は舞台装置の上部にいるのだが、まあ当然途中から踊る。この曲がまた、とてもいい塩梅にアイドル風味なのだ。それを横原くんが踊り出すと、どうなると思う? そう、IMPACTorsが垣間見える。
特に、「キス」という歌詞に合わせて、唇に当てた人差し指を前に出すわかりやすい振りがある。もう、アイドルだった。それまで翔めちゃくちゃダンサーだったのが。アイドルだった。アイドルダンス上手すぎるよ翔と思ったけれど、冷静に考えたらあの人アイドルが副業だった。(※横原悠毅の本職は天才)
プロデューサーの正体を知った翔は、「彼女(舞美)もそうだけど、2人を救いたい」と決意する。「世界中の人を幸せにしたいから、まずは俺の近くにいる人たちから幸せにしたい」そんな、優しい彼らしい言葉を吐いて。
結果、片桐は良い感じに成敗されるし(雑な表現ですまない、ちなみにこの場面でめちゃくちゃせかうつハピエン√を感じて私は楽しくなってしまった)、青春アミーゴはまた手を組んでひとつのチーム「インビジブル」になる。Thank you……心から……👍

全てが丸く収まった──そんな中、マルは姿を消してしまう。

突然マルの姿が消え塞ぎ込む翔。舞美にもきつく当たってしまい(舞美に向かって声を荒げる場面があるのだが、大変よろしかった。ありがとう演出、ありがとう横原くんの芝居)、チームにも顔を出さなくなる。翔はダッドシューズを修理にまで出してマルに再び会おうとするが、それも叶わない。
この場面が私はめっっっっっっっちゃくちゃに好きだった。修理屋からダッドシューズを受け取り、代わりに使っていた靴を「もういらないんで、処分しておいてください」と翔は言う。そうして久しぶりにダッドシューズを履くと、「マル」「修理したぞ」と呼びかける。当然マルは出てこないのだが、その声の純粋さは、親に褒めてほしくて呼びかける子供そのものなのだ。

数分後、その芝居の意味に鳥肌が立った。マルはダッドシューズに憑く幽霊ではなく、死んでなおずっと翔を見守ってきた父親だったのだ──。

そういう゛意味の゛“DAD SHOES”かい゛
真実を知った翔(もうこの辺もすこぶるかわいいのだけれど一旦置いておく)は、「ずっと勝手に見てたくせに、だったらDリーグで俺が勝つのを見届けてから行け」と閻魔大王にカチコミをキめる。何言っているか分からないと思うが、もう一度言う。閻魔大王にカチコミをキめる。トンチキ展開きた。トンチキ展開をエンタメの力で押し通す展開が大好きなので大喜びしてしまった。
地獄の門の前で、魂いっぱい踊る翔とマル。2人の呼吸が合った歌とダンスが、ああ、本当に親子だと見る者に実感をくれた。IMPACTors、言葉以外の手段で芝居をするの、ちょっと上手すぎやしないだろうか……。

終盤は翔がマルに対して感情を曝け出す(元々隠し立てするような人間では無いのだが、父親だと知った上でという意味でだ)場面が多々ある。この時、横原悠毅というactorは涙まで流して声を張る。それでも、彼の芯の通った真っ直ぐな声は、会場全体に滞りなく響き、届く。それが、なんとも心地良かった。
敢えて明言を避けるが、翔とマルの物語は、とてもこの親子らしく幕を下ろしたように思う。きっとこれからも、翔は踊り続けるのだろう。「世界中の人を、俺のパフォーマンスでハッピーにしたい」という、彼自身の夢のために。

本当に踊り倒し、歌い倒し、私が行った公演で横原くんが「疲れるんですよ!」と言っていた通り見ているだけでも運動量エグすぎ舞台だったが、それをあれほどまでやり切る横原くんはやっぱりIMPACTorsのエースだなと思った。(このオタクはかげよこをエースだと思っています)集中力の鬼。表現を纏う姿がこんなに美しいだなんて。そしてなにより、主役を担う華がある。視線を惹きつける引力がある。ダンサーでも、歌手でも、俳優なだけでもない。「IMPACTors」だった。
どんな舞台にも良さがあるし、どんな舞台でも楽しめる私だけれども、これは『マウストラップ』以来の興奮度と言っても過言ではないかもしれない。スケジュールが許すならもう3回くらい行きたかった。くやしい。
この舞台を観て横原悠毅のことを大好きになってしまわない人間がいるなら見てみたい。それくらい、良かった。どうか大千穐楽を迎えるまで、この素敵なカンパニーが誰一人欠けることなくハッピーに踊り切れるように、心の底から祈っています。

横原くん、ありがとう。今度は春に会いましょう。

 

p.s.
観劇したらビアードパパ原さん、そういうこと……❓となりました。あまりにもやることが粋。好き。